死後の相続争いを回避する手段として遺言書を作成する方が増えてきていますが、遺言書の作成だけではスムーズに相続が進まないケースもあります。円滑な遺産分割を実現するために遺言書で遺言執行者を指定することによってことが可能になります。しかし「遺言執行者」が何をする人なのかについて理解している方は少ないかと思います。そこで今回は、遺言執行者の役割と選任するメリット、選び方などについて行政書士が解説します。
遺言執行者とは?
「遺言執行者」とは、遺言の内容を実現するために遺言の内容に従って手続きを取り行う人です。つまり、亡くなられた人を代理して、法律によって定められた範囲内で、亡くなられた人の意思を実現する人です。
遺言執行者の選任について
遺言執行者になるには特別な資格などは必要ないので、誰でもなることができます。ただし、未成年者と破産者はなることができません。
親族はもとより友人や知人でも問題はありません。しかし、遺言執行者の業務は多岐に渡り責任も重大であるため、できれば、利害関係がなく、遺言執行に関する知識を有する専門家の弁護士や税理士、司法書士や行政書士に依頼を検討した方がいいかもしれません。
遺言執行者の指定は必要?
- 遺言認知(民法781条2項)
- 推定相続人の廃除・廃除の取消(民法893、894条)
上記事項が遺言書に含まれていなければ、遺言執行者を必ず指定しなくても大丈夫です。
これらの遺言事項は、相続人では行うことができないため、遺言書で遺言執行者が指定されていないときには、家庭裁判所に申立てをして遺言執行者を選任してもらう必要があります。
遺言執行者の辞任・解任について
遺言執行者は就任を拒否することができ、就任してから辞任をすることもできます。しかし、就任後の辞任には正当な理由が必要になります。家庭裁判所に申立てをして辞任の手続きを行うことができます。
また、遺言執行者を解任することもできます。例えば、任務を怠ったり、不正の疑いがあるなどの場合に家庭裁判所へ解任を請求することができます。
遺言執行者の業務内容は?
具体的には下記のような手続をすることになります。
- 相続人や受遺者へ就任通知書の作成・交付
- 財産目録の作成、相続人への交付
- 金融機関の解約手続き
- 相続財産の登記
- 財産(自動車・有価証券)の名義変更
遺言執行者を選任するメリット・デメリット
メリット
- 円滑な相続手続き
- 相続人の負担軽減
- 相続人の独断や不正の排除
デメリット
- 費用(報酬額)がかかる
しかし、日中に役所や金融機関に行って手続きしたり、相続人から署名捺印を集めたり、かなりの時間と手間がかかるため、専門家に依頼することにより段取りよく手続きを進ることができる点では心強いでしょう。
まとめ
遺言執行者は、遺言の内容を執行するために、単独でさまざまな相続手続きを行う権限を有します。遺言書の作成前に遺言執行者を指定するかどうか迷っている方は、専門家に相談してみることをおすすめします。
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